スーツはどうやって着るの?どれくらいの丈で着るのがいいの?
でも、堅苦しいスーツを着るのさえ億劫なのに、着こなしマナーを聞かされるのは面倒くさい!という方に、雑学的な形で最低限の着こなしマナーをお伝えします。覚えやすいように「なぜそうなったのか」という経緯からお伝えします。
18世紀イギリス産業革命やフランス革命の頃の服が伝統として受け継がれて現代のスーツになっています。大昔の服が伝統衣装としてではなく現在の服として普通に使われてるってすごくないですか?ファッションに興味がない人でもスーツは面白いかもしれません。
今回は、ジャケットの正面に付いているボタンの話をしていきます。
ジャケットにある一番下のフロントボタンは外す(男性のみ)
ジャケットの前にあるボタンをフロントボタンと呼びます。一番下のボタンは留めずに空けておくというのがマナーです。
え!そんな中途半端なことしていいの?全部しっかり留めるのがマナーなんじゃないの?
気持ちはわかる・・・。
でも、スーツは時代で変化するにしても、常に前の時代へのリスペクトがあって、一部形として伝統を受け継いでいるのよ。
少し歴史の話になりますが、貴族は広大な領地を持っていて、働かずとも優雅に暮らせるだけの経済力と権力を持っていました。その代わり、有事のときには真っ先に戦いに出ないといけないという決まりがありました。ある意味、命がけの生活だったのです。
だから、身体を鍛えあげるために(…というか正直暇つぶしのために)狩猟や乗馬を楽しむのが日課でした。日課の乗馬をたしなむときに、馬にまたがるのに邪魔にならないよう一番下のボタンは留めずに開けておくようになったのがルーツです。
結婚式に新郎や新郎新婦の父親が着ていく、モーニングコートにも乗馬の名残が残っています。馬にまたがるときに邪魔にならないよう、前裾が斜めにカットされています。
本筋と話がズレますが、こちらでご紹介しているモーニングコートは珍しく身長150cmから対応しています。サイズの目安として身長・体重が表記されていてわかりやすい上、着る機会の少ないモーニングコートを買う必要がないのもメリットです。ひょっとしたら、結婚式場で借りるより安いかも?
現代のスーツへ話を戻します。フロントボタンが縦1列に並んでいるものを「シングルブレステッド」または「シングル」と呼び、縦2列に並んでいるものを「ダブルブレステッド」または「ダブル」と呼びます。シングルもダブルも、下のボタンを外して着るのは共通しています。
- 1つしかボタンがない場合は留めます。
- シングルで縦に3つボタンがある場合、真ん中のみを留めるか、または一番上と真ん中を留めます。
そして、スーツのボタンは装飾の目的で使われています。手元についているボタンも今は完全に装飾目的です。あのボタン、使いませんよね?
貴族の絢爛豪華な服が、時代の経過によって「洗練」され装飾がそぎ落とされていく中、スーツのボタンは装飾品の名残として存在しています。
男性はスーツにおいて「ボタンはすべて留めなくてはいけない!」というものではないので覚えておきましょう。
女性の場合はすべて留める
女性はフロントボタンをすべて留めます。
おいおい、ややこしいな
なぜすべて留めるのか。女性の社会進出の歴史はまだ浅いので、女性のスーツにこれといった決まりは正直ないんですよね。なので、はっきりした理由は言えません。
しかも、女性のファッションは目まぐるしく変わっていて、その変化の仕方も以前の形を一部受け継いだり…ということがほとんどないんですよ。ルールが曖昧なのが逆に、女性のオフィスファッションの難しいところ。
でも、フロントボタンに関して一つ言えるのは女性は乗馬のときはまたがらず、横乗りをしていたということ。なぜ横乗りをしていたかですが、中世から女性が馬にまたがるのははしたないとされていた上に、ドレスが邪魔だったためとされています。そのため、ボタンを開ける必要がなかったのではないでしょうか。
余談ですが、『耳をすませば』のヒロインも自転車を横乗りしていますね。
また別の理由として、男性と違って女性にはもともとくびれがあり、くびれのシルエットを綺麗に見せるためにボタンをすべて留めるのだと思われます。
まとめ
もしかしたら、就職前の身だしなみ研修で「男性の場合、一番下のボタンは外すのがマナーです。」と言われ、知っていた方もいるかもしれません。
でも、「なんで?」と疑問を持ちながら聞いていたのではないでしょうか。実は、乗馬の文化から受け継がれたものなのです。服で歴史を感じるって面白いですね。
これで『ジャケットの一番下のボタンは開ける』という着こなしマナーを覚えられたのではないでしょうか。
朝の忙しいとき、役員に会う前や面接前など緊張したときだと、細かいファッションマナーも忘れてしまいがちなので、これで覚えることができたり興味を持つきっかけになれたら幸いです。