紺色はなぜベーシックカラーなの?【土着の藍色】

何でも合わせやすいとされるベーシックカラーの服はよく売れるので、色展開はベーシックカラーのものが多いです。特に多いのがホワイト、ブラック、ベージュ、ブラウン、ネイビー。みなさん今も身につけていませんか?

そこで思いました。今挙げた色たちは、なぜベーシックだと感じるのでしょう? 自然界はあれだけ色とりどりなのに、何をもってベーシックだと感じるのでしょう?

白黒、ベージュ、ブラウンは以下のように考えられます。

  • 白黒グレー・・・無彩色でニュートラル
  • ベージュ・・・生地本来の生成り色
  • ブラウン・・・大地の土の色

手を加える前の状態として、ベーシックカラーと感じるのだと思います。では、紺色は?

紺色をベーシックだと感じるのは、かつての藍染め文化から来るものだと思います。ヨーロッパの染め物は綺麗で華やかである一方、日本の染め物は黒っぽくて渋いですよね。でも、この渋い色が落ちつくという感覚は日本人特有のものだと思います。

藍染めされた衣服は、江戸時代に全国各地各地で着られていました。現代でものれん、浴衣、風呂敷、焼き物など紺色の製品はたくさんあります。

合成染料が主流となった現代でもいまだに紺色に懐かしさや親しみを感じるのは、それだけ藍染め文化が根強いのだと思います。

ということで、今回は土着した藍色にフォーカスしていきます。

目次

全国各地の人が着ていた藍染め服

藍色はジャパンブルーと言われ、日本を象徴する色とされていますが、藍染め自体は日本発祥ではありません。

ツタンカーメンのミイラに藍染めの布が巻かれていたと言われるくらい、古くから他国にもあった染色方法です。日本へは奈良時代に中国より朝鮮半島を経て伝わったとされています。

こちら、世界各地のインディゴ染めが載っている本です。藍染めは天然の染料を使ったもの、インディゴ染めは石炭から人工的に作った合成染料を使ったものです。

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それでも藍色が日本の象徴とされる理由は何でしょうか。それは全国各地で多くの人たちに着られていたからです。

藍染めが飛躍的に国内で普及したのが江戸時代。江戸時代から明治初期にかけては日本の衣服の8割ほどが藍で染められ、どこの町にも紺屋という染め物屋さんがある状態だったそうです。

その様子を見て、海外から来訪した人たちは、日本の特徴を藍で表現しています。

日本では全国至るところで藍色の衣装を見た

明治8年に来日した英国化学者 ロバート・ウィリアム・アトキンソン

アトキンソンは日本を「ジャパンブルー」と表現しました。

この国は、大気全体が心もち青味を帯びて、異常なほど澄み渡っている。青い屋根の下の家も小さく、青い暖簾(のれん)をさげた店も小さく、青いきものを着て笑っている人も小さいのだった。

明治22年に来日した英国人文学者 ラフカディオ・ハーン

この国日本は神秘的なブルーに満ちた国

ラフカディオ・ハーン

もともと藍染めは海外から伝来した技術でしたが、日本の藍に驚いた理由として、当時のヨーロッパではすでに天然の藍染めが失われていたこともあるでしょう。

透き通った深い海のような藍の美しさ

そもそも藍染めに興味をもったきっかけは、児島のデニムでした。織物製品を作る様子を見たくて、先日岡山県に行ってきました。

児島にジーンズミュージアムがあり、そこで見た徳島県の藍染めの展示が心打たれるほどきれいだったのがきっかけです。

今作られているデニムは人工的に作られた合成インディゴで染めたものが多いので、パネル展示でした。

本来デニムはカリフォルニアで金鉱を掘るときの作業着で、もともと防虫効果のある藍染めで作られていました。そのため、藍染めの紹介があったのです。

深い海を彷彿とさせるような深い藍色で、パネル展示ながら思わず目を奪われました。

天然の染料だから、ただの青じゃないんですよね。複雑な色が繊維の間に重なり合って、光が当たると単色ではなく何色もの色が乱反射する。色の重層感が藍染めの魅力です。

藤田

今度、藍染めで海外でも活躍の場を広げているクリエーター 福本潮子さんの作品展に行ってきます。

藍染め自体は他国から伝来した技術ですが、日本の蓼藍は色を発色する成分が少なく、その成分を引き出し長期保存を可能にした「すくも法」は日本独自の技術です。

良質な藍でないと染料として使うことはできないのですが、必要以上に良く魅せようとしない素朴な色合いが、とても奥ゆかしく美しく感じます。

藍色は着物や浴衣などの伝統的な領域ではなく、身の回りのものにも使われていますよね。

紺色が親しみやすく感じるのは、この藍染め文化の名残りだと思います。何をもって「ベーシック」とするかは時代によって変わります。でも、未だに紺色がベーシックと感じるのは、こういった文化的背景があるのだと思いました。

しかし、合わせやすいベーシックカラーといえど紺色はひとつではありません。紫がかったもの、少し色あせたもの、吸い込まれそうなほど深いものなど。

ベーシックカラーひとつをとっても、具体的にどういう色が似合うのかを診断しアドバイスすることができます。あなたの身体と調和し、あなた自身の魅力を引き立てる色の服をご提案します。

気になる方は、サービスメニューのページからお問い合わせください。

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ナツミ
パーソナルスタイリスト
個人向けスタイリスト。服にコンプレックスを抱いていましたが、ファッションの勉強してスタイリストになりました。
服を通して、自分らしく生きていく方法を提案しています。身長146cm。
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